「海辺のカフカ」

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

読了。世間が「1Q84」で盛り上がっているときに今頃って感じ。
多分多くの人が思ってるだろうけど、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」に話の造りが似ている。偶数章と奇数章で舞台と人称が変わるところ。田村カフカの章が「ハードボイルド・ワンダーランド」に、ナカタさんの章が「世界の終わり」に相当する。前者は図書館が出てくるところ、後者は影に問題のある人が出てくるところが類似している。また、物語の最後に田村カフカが訪れる森の中の街は「世界の終わり」の街のようでもあり、「羊をめぐる冒険」のラストの鼠の別荘にも似ている。
そんなふうに過去の村上春樹作品のパッチワークのようで、同じモチーフの繰り返しのようでありながら、物語の面白さというか魅力は今までの作品を全て上回っている。なんというか、一つの話であっても多重、多層的に読むことができるのが面白い物語なのであって、物語のバックグラウンドに小賢しい思想が透けて見えて、それを押し付けられるような物語はつまらんのだと改めて思った。


あと、マツダ・ロードスターに乗りたいなあ、と読みながら何度も思った。