「国鉄改革の真実―「宮廷革命」と「啓蒙運動」」

国鉄改革の真実―「宮廷革命」と「啓蒙運動」

国鉄改革の真実―「宮廷革命」と「啓蒙運動」

読了。
去年「RAIL WARS!」を読んで思ったのは、「もし国鉄が存続していたら」という命題を車両や路線だけで考えるのは表面的に過ぎず、労働運動や社会情勢、世論と絡めてifの世界を作らなきゃ面白くないということだ。そして「国鉄分割民営化」をもう一度評価し直すことが、現在を見直すことに繋がっているような気がする。中曽根康弘もいつ死んでもおかしくないし。
そんな訳で今年の読書テーマは「Back to the JNR」ということにして、最初に選んだのがこの本。JR東海会長の葛西敬之が書いたものだが、前半の労務対策、ことに国労動労、鉄労との駆け引きの箇所が手に汗握る展開で、労組側に肩入れして読んだら胃が痛くなった。
この本を読んで初めて知ったのが、国鉄分割民営化と瀬島龍三の関わりが大きかったということ。リアルタイムで中学生から高校生だった私は、三公社の民営化を提言した土光敏夫は知っていて、マスコミでも好意的に取り上げられていたのを覚えているが、あの瀬島龍三が関わっていたことは知らなかった。
特に驚いたのは本書中の以下の箇所。

 六月の何日頃だったか、臨時行政改革推進審議会行革審)の委員だった瀬島龍三氏のところへ行った。
(中略)
私は「重役が全員いなくなっても、列車は何事もなかったかのように通常通りに動くでしょう。私のような本社の課長クラスが全員いなくなったとしても、列車は平常通り動くでしょう。安全で安定した輸送を守り続けてきた鉄道一〇〇年の歴史とはそういうものですよ」と答えた。
 すると瀬島氏が、「そうか、よくわかった。分割民営化をすれば組合側が無期限ストライキを打ってくることもありえると私は感じている。それに対しては、自衛隊を動員してでも輸送を守らなければならないと思っている」と応じた。

今から考えると「そんな馬鹿な!」と思うが、瀬島にとって国鉄改革は治安対策の面が大きかったということを感じさせる。このくだりだけで、本書の価値は十分にあると思った。というか後半は葛西敬之いつものJR東日本disり節が繰り返されるだけで、あまり面白味はなかった。